誤嚥とは
ここでは「誤嚥(ごえん)」について扱います。
「誤嚥(ごえん)」とは、「食べ物や飲み物などでむせてしまう事」を言います。
別の言い方をするのなら、「嚥下」が上手にできない事です。
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誤嚥のリスク
「誤嚥」するとどんなリスクがあるのでしょうか。
窒息 食べ物が気管に詰まって呼吸ができなくなってしまう
誤嚥性肺炎 肺に飲食物が入って、肺が炎症を起こしてしまう病気になる
高齢者は特に「誤嚥」しやすく、「誤嚥」しないよう介助(特に食事介助)する必要があります。
「誤嚥性肺炎」で亡くなる高齢者も少なくありません。
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誤嚥に関する出題例
「誤嚥」に関する出題を見ていきます。
ここの出題例は、第28回試験より出題されている「医療的ケア」の分野です。「誤嚥」以外の用語もしっかり勉強して、押さえましょう。
経管栄養に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。<第29回>
1 栄養剤の栄養素は、胃から吸収される。
2 栄養剤の注入速度が速いと、下痢を起こすことがある。
3 経管栄養によって、口腔内(こうくうない)の細菌は減少する。
4 経管栄養で、誤嚥(ごえん)を起こすことはない。
5 食道への栄養剤の逆流が生じることはない。
「誤嚥」は選択肢4に出てきます。
この問題で主に問われているのは「経管栄養」です。「経管栄養」についても、最初に大まかで良いので把握しておきましょう。
チューブを使って、胃や腸に直接栄養を送り込む事です。胃や腸に穴を開けてチューブを通します。口から食べられない利用者に手術で取り付けます。穴を開ける必要のない、鼻からチューブを通す方法もあります。
1栄養の吸収
1の選択肢は良く読まないと、うっかり○と思ってしまいます。
「胃」は「食べ物を消化」する臓器です。食べ物を胃液と混ぜて分解する役割です。栄養の吸収はしません。
栄養を吸収するのは「小腸」です。
「腸」には大きく分けると「大腸」と「小腸」があります。それぞれの役割をしっかり確認しましょう。
小腸 栄養分を吸収
大腸 水分を吸収
大腸も栄養は吸収しますが、ほんのわずかです。栄養の吸収は「小腸」と覚えましょう。
2栄養剤の注入速度
「経管栄養」ではチューブを通して、専用の栄養剤を胃や腸に注入します。口から飲み込まないから、飲み込んでいる感覚は全くありません。
口からだと一気飲みすると苦しいですね。胃に直接、一気に放り込まれても同じ事です。
栄養剤の注入速度が速いと、一気に胃がパンパンになってしまい、消化ができずに下痢になってしまう事があります。
3口腔内の細菌
「経管栄養」は胃から栄養分をとります。水分も例外ではありません。口から全く飲食物が入らず、口の中は乾燥してしまいます。
「口腔内」とは「口の中」の事です。「経管栄養」の利用者は、口を使っていないから細菌が増えない、という事はありません。
健常者に比べて「唾液」=「つば」が出ない分、健常者に比べて細菌が増えやすいです。念入りな口の手入れが必要です。
4経管栄養の誤嚥
「経管栄養」でも「誤嚥」します!
このページの最初に
「誤嚥(ごえん)」とは、「食べ物や飲み物などでむせてしまう事」を言います。
別の言い方をするのなら、「嚥下」が上手にできない事です。
と書きましたが、「誤嚥」の原因となる物は、食べ物や飲み物に限りません。利用者自身の「唾液(だえき)」や口から入ってしまった「ゴミ」なども含まれるのです。
実は健常者でも寝ている時は、無意識に誤嚥しているとされています。これを「不顕性誤嚥」と言います。読み方は<ふけんせいごえん>です。「顕」は「明かになる」という意味です。
あまりにも違和感があったり、苦しかったりすると睡眠中でもむせてしまう事がありますね。しかし利用者、特に経管栄養の利用者はむせることすらできません。細心の注意が必要です。
5栄養剤の逆流
胃に直接入れたはずの栄養剤が、食道に逆流する事があります。
利用者は胃の働きが弱くなっていて、食道へ逆流しやすくなっています。ベッドで寝たきりだと、なおさら逆流しやすいですね。
健常者でもげっぷをする時に、胃液が逆流して嫌な感じになる事があります。
まとめ
「嚥下(えんげ)」の基本を押さえると、「誤嚥(ごえん)」も分かりやすいです。今回はさらに「経管栄養」についても勉強しました。
「嚥下」がうまくいかない利用者に「経管栄養」をする事がある。
「経管栄養」でも
- 注入速度が速いと下痢をする
- 口腔ケアをしないと口腔内の細菌が増える
- 胃への逆流がある、誤嚥をする
事を押さえました。
栄養の吸収は腸(小腸)で行われる事も覚えておきましょう。